▼ ニュースのポイント
①Stack Overflowの年次最新調査で「Rust」が好ましい言語の1位になった。
②若年層開発者では学習方法でオンラインリソース優位に。
③使ったことがある技術(言語)と使いたい技術のつながりを可視化する試みも。
181カ国8万人の開発者らに調査を実施
IT技術、中でもプログラミング技術を中心とするエンジニア向けのナレッジコミュニティ「Stack Overflow」は2日、毎年恒例の開発者向け調査の最新版結果「2021 Developer Survey」のデータ公開を開始した。運営元のStack Exchangeより発表されている。
調査は、181カ国8万人以上の開発者を対象に、2021年5月25日~6月15日の期間で行われた。ソフトウェア開発などの現場における技術トレンドなど、世界の最新動向を知ることができる。
調査の基礎作業には2020年2月に着手したというが、今回の調査には新型コロナウイルス感染症のパンデミックが大きな影を落とし、人々の仕事や日常生活の現実を激変させていたこと、経済や社会のあり方そのものにも今なお強い影響が及んでいることも確認されたという。
調査に参加した開発者では、全体的に新人の占める割合が高く、コーディング歴10年未満の人が過半にのぼったほか、35%以上は5年未満だった。ITの市場伸長に伴い、新規で技術を学び始める人が世界的に増加していると考えられる。
学習方法については、新たな傾向がみられたといい、18歳から下の若年世代では、技術習得のための教材として、動画コンテンツ(ビデオ)やブログなどのオンラインリソースの方が、これまで一般的だった書籍やスクールでの学習より人気が高く、支持を集めていることが分かった。パンデミック下で非対面方式とオンラインベースがこれまで以上に浸透したことも影響した可能性がある。
またメンタルヘルスへの関心と認識の高まりも顕著にみられた。メンタルヘルスに関する質問に対し、約3分の1の回答者からフィードバックが寄せられており、2020年と比べ2倍になったと報告されている。
自分の好みは多数派?少数派?
言語トレンドについてみると、全回答者で最も人気があるポピュラー言語は「JavaScript」で64.96%、2位が「HTML/CSS」の56.07%、3位が「Python」の48.24%だった。4位以降、SQL、Java、Node.jsなどと続く。
ベテラン開発者に限定すると、1位は「JavaScript」で68.62%、2位が「HTML/CSS」の55.9%、3位に「SQL」で50.73%となった。4位以降はPython、TypeScript、Node.js、Javaなどとなる。
過去1年間に使った言語で、来年もその言語を使いたいか、それとも来年は使いたくないか回答してもらい、それぞれを「好まれている」、「嫌われている」として分類・集計した結果では、Mozillaによる支援で開発されたプログラミング言語の「Rust」が好まれている言語のトップに立った。用いた開発者の86.69%が好ましい言語と考えている。
2位は「Clojure」の81.12%、3位が「TypeScript」の72.23%だった。4位は僅差で「Elixir」が72.11%を獲得、5位に「Julia」の70.69%、6位「Python」67.83%などとなった。
嫌われている率では、「COBOL」が84.21%で最も高く、次いで「VBA」の79.39%、「Matlab」の78.39%、「Objective-C」の73.07%などが高い。
今なお広く使われている「Java」や「C言語」も、好まれている率より嫌われている率が高く、Javaは47.15%が好ましい、52.85%が嫌い、C言語は39.56%が好ましい、60.44%が嫌いとしていた。
今回、開発者が使ったことのある技術(言語)と、使ってみたい技術(言語)との関係性を可視化するという新たな試みも行われ、GoやRustでの開発を始めたいと考えているJavaScriptの開発者が1万人以上存在することや、Dartに関心を示している人の大半が、現在はJavaScriptを用いていること、PHPでの仕事を望むのは、SQL開発者にほぼ限られることなど、興味深いデータが示された。
このほか、好まれているデータベースは、1位が「Redis」、2位が「PostgreSQL」、3位に「mongoDB」となること、クラウドプラットフォームとしては、「Amazon Web Services(AWS)」が最も好まれ、66.55%が好ましい評価を示している。「Google Cloud Platform」は59.65%、「Microsoft Azure」は59.23%の開発者ユーザーが好むという結果だった。
調査はコミュニティやワークスタイルなどにも及んでおり、専用ページから全データとインサイトを閲覧することができる。
Stack Overflowでは、より詳細なテーマを扱った調査も、年間を通じて数多く実施予定としており、今年の初めにはブロックチェーン技術に関する調査を実施、近くクラウド関連の調査も行うとした。
(画像はプレスリリースより)
Stack Overflow 公式ブログ発表記事(プレスリリース)
https://stackoverflow.blog/2021/08/02/▼ サービス概要
Stack Overflowは、プログラミング技術を中心とした開発者向けのQ&Aなど、ナレッジコミュニティとして機能しているもの。2008年に立ち上げられた。ユーザーは優れた回答を行うことで評価ポイントやバッジを得ることができる。全ユーザーによる回答・記述データはクリエイティブ・コモンズライセンス下にあり、世界中で広く利用されている。
運営元社名:Stack Exchange, Inc.
創設者:Joel Spolsky、Jeff Atwood
本部所在地:アメリカ合衆国・ニューヨーク