▼ ニュースのポイント
①パンデミック影響でAIやデータ利用を進めたメーカーが76%
②日常的にAIを用いる製造業の66%で依存度が上昇
③品質管理とサプライチェーン最適化が2大分野
Google Cloudが企業のAI投資状況を調査
Google Cloudは現地時間の6月9日、製造業でのAI導入や投資状況に関する最新調査結果を公開した。委託を受けたThe Harris Pollが昨年の10月15日~11月4日に実施したもので、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、英国、米国の7カ国の製造業、上級幹部1,154人を対象としている。
AIが製造業を変革する期待は高いが、Gartnerの報告では、製造業の中で積極的にAIの導入・利活用を進めている企業は全体の21%にすぎないとされている。しかし今回の調査では、新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生により、AIなどの利用が大幅に増加している可能性が示された。
調査結果によると、対象メーカーの76%がパンデミックの影響でデータアナリティクス、クラウド、AI、ロボティクスなどの技術利用を進めたという。また、日常的に業務でAIを用いている製造業企業の66%は、AIへの依存度が高まったと回答した。
サブセクター別にみると、AIを日常の業務支援に導入している割合は、「自動車・OEM」が全体の76%で最も高く、次いで「自動車サプライヤー」の68%、「重機」関連の67%だった。
何のために、なぜAIを導入するのか、その主な理由を問うた結果では、「事業継続性の支援」と「従業員の効率向上に寄与する」が38%で最多になり、「従業員を全体的に支援」できるとするものが34%で続いている。
Google Cloudでは、AIの技術がリアルタイムの指示・指導やトレーニングなどの規定的分析を提供したり、安全上の危険性を洗い出したり、組み立てラインにおける潜在的な欠陥を検出するといった点に役立つことはすでに明らかだとしている。
課題は人材不足やコスト面?それとも技術プラットフォーム?
調査によって明らかとなった具体的なAIの使用例としては、品質管理とサプライチェーンの最適化が2つの主要分野になっている。
品質管理分野では、日常業務にAIを用いている製造業事業者の39%が品質検査に、35%が製品や生産ラインの品質チェックに使っていることが判明した。完成品の目視検査をAIで行うのも有効で、これにより生産ラインの作業者における反復的な単純製品検査負担を減らし、代わりに根本原因の分析といった、より複雑な作業に集中させられる環境も作り出せるとする。
サプライチェーンの最適化の分野では、36%がサプライチェーンマネジメントに、同じく36%がリスクマネジメントに、また34%が在庫管理に、それぞれAIが活用されていた。
パンデミックの発生により、市場経済や消費者ニーズが大きく変化する中、それに対応しつつ、ますます個別化された製品が求められるトレンドにも適応するため、メーカー各社はAI技術への関心も高め、サプライチェーンとオペレーションモデルの再考を進めているとみられる。
AIの日常業務への導入状況は、地域によりかなりの差があることも、今回の調査で明らかとなった。それによると、イタリアで80%、ドイツで79%など高い値であるのに対し、米国は64%、日本が50%、韓国で39%などやや低い割合になっている。
中核事業にAIを導入する上で、障壁となっているものは何かという問いでは、AIを適切に活用できる「人材の不足」が25%、「インフラの欠如」が23%、「高額なコスト」が21%などとなった。人材不足やコストの問題は、確かに導入ハードルとなっているものの、いずれも4分の1から5分の1と、さほど重大な障壁とはいえない様相も見てとれる。
ここからGoogle Cloudでは、むしろ生産現場の実践に適したAIパイプラインを管理するための技術プラットフォームとツールがあるかどうかがポイントではないかと分析、これらの普及サポートについて、今後取り組みを強化していきたいとした。
AIが普及するかどうかは、やはり導入のしやすさと使いやすさ、実際に問題解決にどれだけ役立つかにかかっているとみられる。大量生産の時代から、ニーズの多様化、多くの市場変動要素を抱えるこれからの時代にこそ、製造業でのAI活用はイノベーションをもたらす重要なきっかけになると考えられている。
(画像はプレスリリースより)
Google Cloud プレスリリース
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