最新技術で究極の業務効率化改善へ
BMWが量子コンピュータを活用したサプライチェーンの効率化を図る取り組みを進めていることが判明した。同社に量子コンピューティングのシステムモデルを提供するHoneywellがこのほどその事実を明らかにし、最新の実証実験結果を公開している。
車が私たちの手に届くまでには、その部品材料調達や組み立てなど数多くの工程を経ている。そしてサプライヤーからメーカー、卸売業者、流通業者、小売業者、消費者へと、さまざまな人の手から手へ流れる物流工程がある。
これらを最良のかたちで管理し、顧客の満足度を高次に維持することはメーカーにとって非常に重要なことであり、わずかな中断や非効率性があっても、全体では膨大な時間とコストの浪費につながってしまう。
BMWでは、グループ全体で常にこの業務体制を最新の技術で最適化し、エンジニアリング・パフォーマンスを改善すべく努めてきた。そして現在はHoneywellの量子コンピュータである「システムモデルH1」に着目しており、シンガポールの量子ソフトウェアベンチャー、Entropica Labsとも提携、サプライチェーンと物流の改革に挑んでいるという。
実験で良好な結果を確認
今回、開発チームは、物流やサプライチェーンの最適化問題に適しているとされる既知の量子アルゴリズム「再帰的量子近似最適化アルゴリズム」(R-QUOA)を用いた実験を行った。Honeywell H1ハードウェアの持つ完全な量子ビット接続性、高い忠実度の演算、量子ゲートの高角度分解能が活かされている。
量子プログラムの実行時に用いることが可能なキュービット数は、現時点ではまだ限定的であることから、今回の実験では古典的な手段でも対応できる小規模な問題、組み合わせ問題の数分割を対象とした。
その結果、H1量子ハードウェアが記録した性能結果は、古典的なKarmarkar-Karp(KK)ヒューリスティック・ソリューションと遜色のないものだった。量子ハードウェアが出した解は、キュービットに対するさまざまな操作がどのような反応を示すかについて予測する古典的シミュレーターでの解とほぼ同じで、200回の試行でその確かな性能が確認されている。
HoneywellとBMWグループでは今後、R-QAOAのより高次なバージョンが、KKなど主要な古典的アルゴリズムを上回る性能を発揮できるかどうか検証を重ねていくとしている。
今回の実験結果から得られる知見で、より複雑な問題を取り扱えるだけの十分なキュービット数が量子システムに搭載されれば、これまでのアルゴリズムが直面してきた壁を越え、現在のサプライチェーンが抱える問題をさらにスマートに解決できる可能性が高まったといえる。
量子テクノロジーの本格的な実用化には、まだ一定の歳月は必要とみられるものの、Honeywellでは今回のプロジェクトを量子テクノロジーのスケールアップに向けた重要な一歩とし、こうしたグローバルなサプライチェーンなど、現実世界の問題へ対処できるような未来へ、私たちは急速に近づいているとコメントしている。
(画像はプレスリリースより)
Honeywell プレスリリース
https://www.honeywell.com/