▼ ニュースのポイント
①Adobeが企業のコンテンツ制作と効率化ニーズに応える「Adobe Firefly」エンタープライズ版を発表した。
②安全に商用利用可能な体制を整えた生成AIで、ブランディングに沿った活用を支援する。
③自社のブランド資産でカスタムトレーニングが可能、独自スタイルでの迅速なコンテンツ生成が叶うAIソリューションに。
エンタープライズ版を今年下半期に提供開始へ
Adobeは現地時間の6月8日、画像生成AI「Adobe Firefly」のエンタープライズ版を発表した。同社のデジタルエクスペリエンスカンファレンス「Adobe Summit EMEA 2023」で言及されたもので、2023年下半期には提供を開始する。
急速に高まるデジタルコンテンツのニーズやその展開規模に各企業が対応し、コストを抑えながら、素早く必要なコンテンツを制作できるよう設計された、ビジネス利用可能な画像生成AIで、クリエイティブなスキルのレベルを問わず、あらゆる組織のスタッフがブランディングに沿うコンテンツを生成、「Adobe Express」や「Adobe Creative Cloud」で編集できるようになるとされる。
近年のビジネス界では、事業部門を問わず、社内外に向けた魅力的コンテンツを作成する力量が求められ、とくに各専門スタッフや部署同士のコラボレーションや、顧客とのエンゲージメント深化、パーソナライゼーションの実施などにおいて、コンテンツの重要性が増している。
その制作ニーズへ適切に対処できるかどうかが仕事の成否を分けることも多く、効率良く高品質なコンテンツを得たいシーンは多い。今後2年間で、こうしたコンテンツニーズは現在の約5倍にまで増加すると予想する向きもあり、対策は急務といえる。
「Adobe Firefly」エンタープライズ版は、こうした背景から設計されたもので、「Adobe Creative Cloud」や「Adobe Express」、CMSソリューションの「Adobe Experience Manager」を用いる数百万の企業ユーザーに対し、安全に商用利用可能な生成AIでの画像作成・編集機能を提供する。
誰もが美しく思い通りに楽しくデザイン可能
「Adobe Firefly」エンタープライズ版を用いれば、「Adobe Express」を通じて提供される高品質なテンプレート、フォント、ストックイメージ、動画、音楽などの素材コレクションからインスピレーションを得て、簡単に魅力的なコンテンツを作成できるようになる。
作成したコンテンツは、SNSに投稿し共有したり、動画や画像、PDF、チラシ、ロゴ、プレゼンテーション資料などで活用したりすることも簡単にでき、誰もがデザイン制作作業を楽しく、効率良く行えるという。
エンタープライズ版として、商業的に利用可能なプロ品質のコンテンツ生成に対応するという点もこだわりのポイントで、初代モデルは「Adobe Stock」の画像、オープンライセンスコンテンツ、著作権がすでに失効したパブリックドメインコンテンツによるトレーニングがなされており、質の高さはもちろん、他のクリエイターやブランドの知的財産権を侵害する可能性のある学習や生成とならないことも保証された。
2023年3月以降、「Adobe Firefly」のβ版ではユーザーらによって2億枚以上の画像生成がすでに実行され、「Adobe Photoshop」ユーザーには「Adobe Firefly」を搭載した新機能の「生成系塗りつぶし」で1億5,000枚以上の画像生成がわずか2週間の間になされるなど、その有用性とインパクトは広く社会に影響を与えるものになっている。
知的財産補償付きで安心、信頼性も確保
「Adobe Firefly」エンタープライズ版の提供開始後には、企業ユーザーはそれぞれ自社所有のブランド資産でこれをカスタムトレーニングし、エコシステムに組み込んでいくことが可能となる。
APIを用い、ブランド独自のスタイルや、ブランド言語によってコンテンツ生成を進め、自動化、DX化推進を図ることもできる。
生成AIの商用利用における権利関係の不安点を払拭すべく、安全に配慮した設計となっているほか、Adobeによる知的財産補償を受けられるため、安心して組織全体で活用できるメリットもある。
また、消費者などコンテンツの受け手側にも配慮し、信頼性を確保すべく、この生成AIが用いられたことを示す「コンテンツクレデンシャルタグ」を自動で付与する仕組みも搭載した。これが「Adobe Firefly」によるコンテンツの透明性を保つものとなる。
「コンテンツクレデンシャルタグ」は、コンテンツ名、日付、作成に用いられたツールなどの情報、加えられた編集内容を示し、デジタルコンテンツの「成分表示ラベル」として機能する。
このタグによる情報開示は、コンテンツの使用、公開、保存といったあらゆる局面でコンテンツに付随、消費者らを含む全関与者がその真正性について、十分な情報を得た上で判断できる環境を作るものとなる。
同機能はオープンソースツールとして、Content Authenticity Initiative(CAI)とその1,000を超えるメンバーらとのパートナーシップのもと、Adobeが開発した。
(画像はPixabayより)
Adobe プレスリリース
https://news.adobe.com/news/▼ 会社概要
Adobe Inc.はデザインやイメージング関連を中心とするソフトウェア・テクノロジー企業。ビデオ編集ツールでトップシェアを誇るほか、マーケティングツールやEC関連サービス、AI、クラウド事業などにも力を入れている。2018年まではAdobe Systems Incorporatedという社名だったが、社名変更し、現在のAdobe Inc.となった。
社名:Adobe Inc.
CEO:Shantanu Narayen
所在地:米国・San Jose, California