▼ ニュースのポイント
①AI活用の新時代におけるデータ活用の統合基盤となる「Microsoft Fabric」が発表された。
②世界初のエンドツーエンドSaaS型アナリティクスサービスとして提供される。
③あらゆるデータを一括管理、チームのコラボレーションを促し見出せる価値を最大化する。
新時代の企業ツールとして
Microsoftは現地時間の5月23日、開発者向けカンファレンス「Microsoft Build 2023」において、新時代のデータ分析を支える統合プラットフォーム「Microsoft Fabric」(「Fabric」)を発表した。
生成型AIが急速に進化・普及し、企業における活用ニーズも高まる中、膨大なソースデータを正確かつ最適に、効率良く扱えるようにするための基盤として機能するとされ、今後の重要なビジネスプラットフォームになる可能性がある。
「Fabric」は、データ分析界における世界初のエンドツーエンドSaaS型アナリティクスサービスとされる革新的クラウドサービス。その中身はMicrosoftの主力分析アプリ「Power BI」、複数のデータストアを跨いだ大規模分析を実行するツール「Azure Synapse Analytics」、そしてOpenAIと共同開発した「Azure OpenAI Service」をひとつにまとめたもので、統合型コンピュートとストレージを基盤にワンストップサービスを提供する。
AIの本格活用を見据えたデータ統合基盤では、構造・非構造の別を問わずあらゆるデータが自在に活用できる状態に置かれること、それらが膨大となっても適切に管理・分析でき、かかる手間やコストも最小限に抑えられることが重要となるが、現時点でそうしたプラットフォームは普及していない。「Fabric」はそのソリューションとなり得る。
「Fabric」が可能にすること
「Fabric」は次の6つのサービスを主に提供する。まず「データ統合」として、組織内の多様なデータソースからデータを一カ所にまとめ、一元化されたデータレイクで管理する。異なるデータエンジンからのデータ統合にも対応する機能を有する。
「データエンジニアリング」として、データの整形や加工作業をサポートする。データ処理に必要なクレンジングや変更、統合のための機能がある。「データウェアハウス」のサービスもあり、データの保存・管理、クエリの実行などが行える。「データサイエンスモデリング」として、モデル構築やその実行を支援する。データから予測モデルや機械学習モデルを効率良く作成できる。
「リアルタイム分析」サービスで、データの迅速な分析と可視化をサポートする。ストリーミング処理やリアルタイムでのダッシュボード作成などにも対応している。「ビジネスインテリジェンス」機能も備え、データの可視化やレポート作成・出力、ダッシュボード作成などが実行できる。
これらはマルチクラウド対応で、複数のクラウドプロバイダやストレージアカウントからのデータを統合して使えるものとなる。またデータのセキュリティとコンプライアンスを重視しており、機密性に応じたラベルづけや移動時の保護機能なども備えている。
サービスの鍵を握るのは、「OneLake」という新データレイクである。「OneLake」はSaaS基盤上に構築され、「Azure Data Lake Storage Gen2」を用いており、どんなクラウドコンピューティング環境でのワークロード実行でも、同じひとつのストレージプールとして使うことができる。
Open Delta Parquetを用いるため、仮想テーブルを作成し、データの移動なくショートカットで透過的に使える仕組みを実現、あらゆるデータを適切に変換し、Spark、SQL、Power BI、Excelなどからのアクセスを叶えるものとした。変換に必要なSparkコンピューティングエンジンも高速に自動プロビジョニングされることから、高度な分析要求にも対応できるとされる。
こうして、データ活用・分析の領域で、SaaSベースのデータ投入から可視化まで、エンドツーエンドの一気通貫、シームレスなデータソリューションを構築することができている。
なぜ「Fabric」なのか、その独自価値
「Fabric」を用いることで、膨大なデータを多様な環境で扱う新時代となっても、それぞれのクラウド環境にデータサイロが発生することを防ぐことができる。
また、シンプルさに重点を置いたデザインと構想により設計されているため、幅広いユーザーにとって利活用しやすく、ビジネスユーザー、アナリスト、データエンジニア、データベース管理者、データサイエンティスト、BI開発者、レポート作成者など全ペルソナのニーズを満たして、それぞれのコラボレーションやチームワークをより強力にサポートする効果がある。
ワークロードごとに個別で選択する複雑性が排除され、全工程がシンプルで最高のパフォーマンスを発揮できる環境となることもメリットだ。
将来のデータ戦略がデータメッシュを起点に、事業部別、プロジェクト単位など、広くデータ活用を促せるようにもなる。分析パフォーマンスにおいても、業界最高水準を実現しているといい、最適な分析ツールとプラットフォームの獲得、全体がシームレスに機能し確かな結果を出す環境が容易に手に入る点で画期的とされる。
なおMicrosoftでは、この「Fabric」をPublic Previewで無料トライアル公開し、さらなる改良につなげるため、広くフィードバックを求めている。
(画像はプレスリリースより)
Microsoft プレスリリース
https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/▼ 会社概要
Microsoftは情報通信技術の開発・販売を手がける総合企業。コンピュータ黎明期の1975年に創業し、1985年にはパソコン向けOSの「Windows」を開発、以降Microsoft Officeや、WebブラウザのInternet Explorerなど数々の製品で時代を作ってきた。近年はEdgeブラウザ、Surface製品、クラウドサービス、AR、AIなどの開発・提供を進めている。
社名:Microsoft Corporation
CEO:Satya Nadella
所在地:米国・Redmond, Washington